三鷹市障がい者就労支援センターかけはしでは、障がい者の就労支援のネットワークを広げていくことを目的に、就労支援座談会「かけはしサロン」を開催しております。会場は星と風のカフェ http://www2.bbweb-arena.com/hshcafe/ のご協力をいただいています。
第3回のかけはしサロンは、2月1日に開催しました。今回のゲストには、34年間養護学校(特別支援学校)教員として知的障害の子供たちと過ごされ、定年後は、卒業生を1人でも多く社会に送り出したいと、事業を展開されている小島靖子さんをお招きいたしました。小島さんは、「障がいを持った人を含めて社会が成り立っていることが普通である」という信念のもと、卒業生が立ち寄る場を作りたいと考えられて、スワンベーカリーのフランチャイズ1号店である「スワンベーカリー十条店」を開店されました。そして、13年目に入る現在は経営に関わる一方で、北区より就労支援センターの委託を受け、就労に関する相談や支援も行っておられます。
前半の話題提供では、養護学校の卒業生を応援する会「ヴイの会」を創設され、その後も、就労の場を作ることを目的に有限会社「ヴイ王子」を設立されたお話と、スワンベーカリーを裏通りの小さなパン屋として街の中で認めてもらえるまでの興味深いお話などをお聞きしました。買ってその場で食べられるイート・インスタイルは、働いている障がい者が気軽に立ち寄れる場として、スワンが最初に始めたこと、裏通りという悪条件を克服するために「障がい者が美味しいパンを作る、売る、宅配する」に行きつき、パンに季節の便りを同封するなどの工夫を通して、ついにはスワンの宅配が霞が関の厚生労働省の売店にまで広まったお話が、静かな感動をよびました。現在は、社会福祉法人「ドリーム ヴイ」を設立されての生活支援、続けて株式会社「ヴイ街なか」設立へと発展されました。当初は孤食で栄養が偏りがちな障がい者が「集って食べられる場」としてスタートした“ダイニング街なか”は、その健康的で安全な食事が評判を呼び、高齢者や食に関心のある方々にも受け入れられるようになるなど、食を通して地域に大きく貢献されておられます。
後半は、軽食をとりながら小島さんを囲んで、こぼれ話や質問、@歓談や名刺交換などを行い、18名の参加者の皆様と積極的に交流していただきました。参加者の多くは支援に関わっていらっしゃる方々で、より具体的で熱心な質問がなされ、時間を忘れるほど盛況な座談会となりました。最後に小島さんからのメッセージとして、「彼ら障がい者をいかに多くの人々と出会えるようにしていくか、障がい者とかかわった以上は、それが本来の仕事だと思いたいです。何の作業所かな?で終わって、地域の方が入ってこないのではダメですよ、入ってこさせないと。地域の近所の方たちや多くの人に発信していかないと。こういう時代だから彼らの存在が価値を持っていると思うんです」とのお言葉を頂戴しました。小島さんより、お話と共にパワーを戴いて閉会となりました。
以下、参加していただいた皆様からの感想です。
・いろんな意味でためになった。今後の売り上げや就労支援に今まで気づかなかった面が見えた。
・自分のところではどういうクッキーが売れるのか、売る方法のヒントを得た。
・工賃UPで頑張ろうとすると自分が大変になるという迷いがあったが、出来ることはあると思った。
・今は2つのクッキーの開発を大切にやって、自分のところも頑張ろうと思った。かけはしサロンのこういうアットホームな雰囲気は、講師を身近に感じて良いと思う。
・売り上げだけが目的ではないが、やはり仕事として数字をあげていかないとならないと思う。
・忘れていた熱いものが思い出され、作業所に入職した頃の気持ちを思い出した。作業所も新しい展開を考えていかないとならない、と思った。
・逆境を考え直すエネルギーをもらった。数字に追われる中にあっても、仲間と売り上げの目標を共有したいと思い、伝えようと思う。今後の生き方を明日からの自分に問いなおしたいと思った。
・面白い話がきけて良かったと思う。大事なのはこころざしだと思う。福祉の制度が良くなるのは大事なことだが、福祉の枠組みの中でしか考えないのは良くないと思っている。
・情報収集がその後の支援に繋がると思っている。明日からも繋げていくことを実践したいと思う。
・ふだん接している、どの障がい児の親ごさんも本人に自分で生きていけるようになってほしいと、自立を望んでおられるのを感じる。
・就労前の障がいのある子供たちに関わっているが、スワンで働く人たちの様に「働く大人」に育てようと思った。
・大きい売り上げ目標に対して、たとえ結果が低くても、良く頑張ったじゃないと励ますことが今後の生きる力になっていくと思う。
・パン工房での働く人数と売り上げのバランスが一番の課題である。法人に守られているのでつぶれない、という考えではいけないと思った。売り上げをシステム作りから変えていこう、発信していこうと思った。
・小島先生の哲学、信念がきっちりあって軸がブレない。これがあったからスワンは発展していったと思う。軸をどこに置くかが重要だと思う。自分は誰に支えられているかというと、障がい者に支えられている。福祉の中にいると分からないが、福祉の枠を外して社会としてみると、彼らの笑顔がたくさんの人を支えているんだと思った。
・障がい者は、障がい者であるというネームバリューで良いと思う。障がい者が作るパンを口にしたときに「あー美味」と思ってもらえれば、二重の価値が出てくると思う。私は、彼らの作ったハム・ソーセージをいろんな人に贈るが、みんな美味しい美味しいと言ってくれる。いろんな世界に理解されていくことで、障がい者が生きやすい世の中になると思う。