三鷹市障がい者就労支援センターかけはしでは、障がい者の就労支援ネットワークを広げていくことを目的に、就労支援座談会「かけはしサロン」を開催しております。障がい者の就労支援を進めるために、まずは地域の企業を知ることから始めようと、第4回目より三鷹の企業の経営者の方々をゲストスピーカーにお招きしてきました。第6回目となる今回は、昨年のゲストスピーカーである株式会社文伸の川井社長よりご紹介を受け、竹内運輸工業株式会社の代表取締役社長、竹内政司氏をお招きいたしました。当日は、三鷹市役所、三鷹市内の事業所、福祉施設など19名の方々にご参加いただきました。開催は7月1日で、今回も会場は星と風のカフェ(http://www2.bbweb-arena.com/hshcafe/)のご協力をいただきました。
竹内社長からは、会社の歴史についてと、会長を務めておられる武蔵野法人会について、そしてブラジルの日系社会について、お話を伺いました。
まず、会社の歴史については、創業して70年で、三鷹に来られて60年とのことですが、昭和6年お米屋さんから始まり、現在の運送業にいたるまで、紆余曲折の物語があったとのことです。戦後は立川飛行機の終戦処理などを行い、その後自動車の部品などの運搬、運送業を手掛けるようになりました。昭和28年に法人化した時には、「お客様と社会への感謝」「社内の融和と共助」「社員の幸せと社業の発展」という3本柱を社是に掲げられました。また、安全対策・品質保証にも力を入れ、国際化に対応して世界中で認められるISOの基準を導入し、環境に配慮した取り組みを行ってきました。現在では、運送業の他にも物流センターや建築関係の業務と幅広く取り組んでおられます。
次に、法人会についてお話いただきました。武蔵野法人会は、税知識の普及を目的に設立され、現在は社会貢献を行うことなども目的としています。昭和25年から活動を始め、現在では、武蔵野市・三鷹市・小金井市から3800社が加入しています。法人会としては、税金の勉強会やパソコン教室、経営者講座や自己啓発のさまざまなプログラムを行っています。また、地域の人たちと一緒に玉川上水の清掃活動を行ったり、中学校でのキャリア教育を行ったり、社会貢献活動としてフィリピンの子供達や東日本大震災への募金活動なども行ってきました。身近にありながらあまり知られていなかった法人会の活動内容を知ることができ、大変勉強になりました。
最後に、竹内社長よりブラジルの日系社会のお話を伺いました。竹内社長は、大学卒業後に日本語新聞の記者としてサンパウロに3年間滞在されていたとのことです。現在でも外国人記者クラブに登録されている竹内社長から、移民の歴史について、データや図を用いながら分かりやすくお話いただきました。ブラジル移民の歴史は1908年の笠戸丸での移民が始まりで、そこから先人たちが苦労してブラジルの地を開拓していきました。第二次世界大戦後の日本人同士の争い、日系人が救援物資を終戦後の日本に送っていたことなど、我々も知らなかったブラジル移民の歴史を、豊富な資料をもとに教えていただきました。竹内社長は昨年、会社の60周年行事を行うかわりに、ブラジル移民を日本に招くという里帰りプロジェクトを行いました。一個人として20名の日系人の方の里帰りを実現させたということで、新聞などのメディアに取り上げられました。写真からは、ブラジルに渡ってから一度も帰国したことのない日系人の方たちが、心から喜んでいる様子が分かりました。
お話の後は、軽食をとりながら懇談会となりました。参加の皆様の質問に、竹内社長よりお答えいただきました。
・地域と社会への貢献について
竹内社長は、ご祖父様もお父様も、地域とのつながりをとても大切にされていたので、その姿を見てご自身もごく自然に地域社会への貢献活動をされてきたとのことです。また、会社の従業員の方々もこのような活動を理解し、応援されているとのことで「父がそういう教育を社員にしてきた。それについてはとても感謝している」とお話されていました。
・海外経験について
「大学卒業してすぐにはうちの会社には入れないというのが、父の方針だった。今思えば『他人の釜の飯を食え』ということで、ブラジル移民の苦労を父も知っていたのではないかと思う。ブラジルでいろいろな人に助けてもらってやってこられた。自分ができることは限られているので、地域の色んな活動を通じて何かやりたい、そういう思いはある」とのお話を伺いました。
・障がい者雇用について
「日本の経済環境が大きく変わった。以前は障がい者がする仕事がいろいろあったが、今は少なくなって、多くは海外へ行っている。雇用ができる業種とできない業種がある。今すぐ雇用は難しいけど、見学や職場体験なら対応はできる。」とのお話をいただきました。
あっという間に時間がたち、参加者の皆様の感想をお聞きする時間がなくなるほどでした。終了後も、竹内社長と歓談する列が途切れませんでした。今回も、普段聞くことができないお話を伺う貴重な会であったと思います。「かけはしサロン」が、良き出会いの場であるように、また、就労支援のネットワーク作りに役立つように、今後もさらに充実した企画にしていきたいと思います。