「障がい者の就労を考えるつどい 2013 ~障がい者の就労を実現するために~」報告
今年度の「障がい者の就労を考えるつどい」は、11月1日(金)三鷹産業プラザにて、三鷹市・武蔵野市・ハローワーク三鷹の3所合同開催にて行われました。障がい者の就労を実現するためにはどのような準備が必要なのか、ハローワークや企業からのお話や当事者・関係機関からの発表も交えながら、会場の皆様とともに学びの時間を持ちました。参加者は138名と、当事者・ご家族・企業の方々や、各方面の関係機関(福祉・医療・教育・行政)からたくさんの方々にご参加いただきました。
開会にあたり、三鷹市、武蔵野市よりご挨拶をいただきました。三鷹市の清原慶子市長は公務出張のため、副市長の河村孝氏より市長の挨拶をご代読いただきました。「障害者総合支援法の施行や精神障がい者を法定雇用率に加えることが予定されるなど、障がい者の就労に関わる環境が大きく変わろうとしています。本日のつどいが、相互理解を一層深める機会となるようお祈り申し上げます」とのお話でした。河村氏からは「暮らしやすい街というのは、障がい者の方が暮らしやすいと感じる街だと言われています。地域を預かる行政として、暮らしやすい街、働きやすい職場を実現してまいりたいと思います」というお言葉をいただきました。また、武蔵野市の邑上守正市長も公務出張のため、健康福祉部長の笹井肇氏よりご挨拶として「武蔵野市は健康福祉総合計画の中で就労支援体制の強化を重点的な取り組みとしています。障がい者の経済的、社会的自立のためには就労が大きな柱になっていくだろうと考えています。当事者と就労支援センターと行政と地域が一体となって、より良い障がい者就労が進むことを祈念しております」とお話しいただきました。
次に、行政報告として、ハローワーク三鷹雇用指導官の岩島英樹氏より「障害者雇用の現状について」と題してご報告をいただきました。平成25年4月1日から障がい者の法定雇用率が引き上げられ、民間企業では、常用労働者数50人以上の会社が対象になり、法定雇用率も1.8%から2.0%に引き上げられました。実際の雇用者数も平成20年度からの5年間の推移を見ると、徐々に増加しています。新規求職申込状況においては、東京労働局、ハローワーク三鷹のどちらのデータでも、精神障がい者の件数が増えています。就職状況では身体・知的障がい者の数がほぼ横ばいであるのに対し、精神障がい者の方の件数は右肩上がりに増えています。東京労働局のデータによると、身体・知的・精神・その他を合わせた就職状況は平成24年度に初めて5000件を超えました。岩島氏からはさらに、障がい種別ごとの職業別の内訳や、ハローワークの専門援助第二部門と雇用指導官が行っている業務の説明、精神障害者雇用トータルサポーターについてのご説明がありました。まとめとして「障がい者雇用を進めるためには、就労準備から職場定着に至るまで行政や関係機関が連携してチームワークにより一連の支援を行う『チーム支援』が重要である」とお話しいただきました。
企業からの講演では、株式会社レオパレス・スマイル業務部長の湯田正樹氏より、「企業における採用の手順・ポイント」というタイトルでお話をいただきました。企業の採用方法・採用ルートの構造や、面接会で確認するポイント、長年取り組んでおられる委託訓練についてのお話を伺いました。また、定着支援で大事なことについてお話を伺いました。企業におけるビジョンを理解し、社是・社訓・社長の思いを理解することから始めることが重要である、とのお話でした。職場での取り組みとして、社内研修やメンタルヘルスカウンセリングなどを実施していることや、支援機関との連携としては年2回4者面談を実施していることをお話しいただきました。会社・家族・支援機関・学校の4者が一同に会し、会社の取り組みや本人の様子について情報を確認し共有する取り組みをされているというお話でした。講演の最後には、(株)レオパレス・スマイルの全体朝礼の様子を映像で拝見しました。朝の元気な挨拶から始まり、ストレッチ体操、身だしなみチェック、掃除当番の確認をし、さらに各班で朝礼を行ってから業務に入るということでした。皆がいきいきと、やりがいを持って働いている様子がよく分かりました。まとめとして湯田氏からは「会社にとって、社員は財産である。仕事への厳しさ、仕事への喜び、社員としての誇り、情報開示や待遇改善、福利厚生など、全てにおいて本音で話せる関係構築を目指して努力していくことが大事」というお話をいただきました。
実践報告では、まず武蔵野市障害者就労支援センターあいるより「障がいのある人を職場に迎えるにあたって必要なこととは?」というタイトルで、株式会社武蔵境自動車教習所の障がい者雇用に関する取り組みをご報告いただきました。まず、Aさんが採用されたきっかけである「ハートフル実習」についての説明がありました。これは、武蔵野市自立支援協議会はたらく部会が行っている障がいのある方向けの職場体験プログラムのことです。株式会社武蔵境自動車教習所でのハートフル実習後、「障がい者雇用をすすめたい」という意向を受けハローワークの雇用指導官と会社を訪問したことや、職場での仕事の切り出しなど、あいると会社側とで行った準備についての報告がありました。次に、株式会社武蔵境自動車教習所の高橋明希社長より、会社概要や雇用のきっかけ、Aさんのお仕事ぶりについてのお話を伺いました。高橋社長は大学院で研究員として勉強されており、「良い会社の条件として、障がい者も高齢者もいきいきと働いていることが大切である」とのお話を聞いたことがきっかけで、障がい者雇用を考えるようになったということです。様々な福祉施設を見学され、高いプロ意識を持っていきいきと働く障がい者の姿を見て感動し、働く意欲の高い障がい者の方が活躍できる場をつくりたいと、あいるに相談されたということです。Aさんを採用してからは、社員やお客様など周りの人が優しくなったと感じる、というお話でした。高橋社長は「今後Aさんが活躍することで、やさしくいきいきとした会社を作ることができると考えています」とお話しされていました。さらにAさんの上司である百地一人氏からも、Aさんの仕事の内容や会社での様子についてお話しいただきました。最初のころは緊張していたAさんも、今ではどの社員とも楽しく話せるようになったこと、額に汗をかきながら隅々まで清掃にとりくんでいることや、Aさんの好きなパソコン業務を少しずつ増やしていることなどをお話しいただきました。百地氏は、「一緒に過ごす時間が増えることで信頼関係が築け、お互いに成長できるのではないかと思っている」とお話しされていました。
三鷹市障がい者就労支援センターかけはしからは、「就労支援のサービスを利用しながら就職に向けて取り組んでいる当事者と支援者からの実践報告」と題して、就労継続支援B型の施設であるむうぷ舎中原に通所するTさんと、職員である川島大一郎氏よりインタビュー形式でお話を伺いました。あきらめずに粘り強く課題に取り組むTさんの様子や、川島氏の行った支援についてのお話を伺いました。Tさんより病気の経過とデイケアの体験などのお話や、むうぷ舎中原に通所してからは生活リズムを整え、対人コミュニケーションの課題に取り組んだことを伺いました。川島氏からは、「就職するという目標も大事だが、就職した後に仕事をしっかりと続けていける力を身につける、あわてずに力をつけることを本人と確認した」と話されていました。就労に向けての体力作りのため、本人の希望で、休憩時間を減らしたり、残業を行ったりして体力作りに取り組んだとのことです。その後、面接や企業実習では残念ながら不採用となりましたが、その結果を受けてTさんは、東京障害者職業センター多摩支所での職業評価と職業準備支援プログラムを利用されます。その過程で見えてきた課題に取り組みながら、Tさんは粘り強く就職活動を続けています。ひとつずつ課題に取り組むTさんの姿に、会場からも共感している様子が伺えました。最後にTさんは「現在、2次面接を通過した企業が一社あり、働きたいという熱意を伝えたいと思います。これからもビジネスマナーを磨き、失敗を修正し、今までがんばってきたことが早く形になればいいなと思っています」とお話しされていました。
講演、実践報告とも中身の濃い内容であったため、質疑応答の時間がなくなってしまったことは残念でした。最後にハローワーク三鷹の松井勝所長より閉会のご挨拶として「本日は行政からの報告に加え、企業・当事者・支援機関の方それぞれの立場から実践的なお話がありました。会場の皆様には何かしら持ち帰っていただければ嬉しく思います。働く意欲を持った障がい者の方が、働くことで社会参加をし暮らしていくことを実現するために、社会資源のネットワークも大事だと思います」とお話しいただきました。
当日はたくさんの方ご協力をいただきました。ご後援いただいた武蔵野商工会会議所様、三鷹商工会様、武蔵野市民社会福祉協議会様、三鷹市社会福祉協議会様には、広報活動にもご協力いただき、誠にありがとうございました。
アンケートの回答を一部ご紹介します。
・ためになった。やる気が出た。ポイントがつかめた気がする。
・色々な方からの意見が聞けたのでとても勉強になりました。就労は見直されているが簡単にできるものではないと感じました。
・充実の内容、ありがとうございました。今回の内容を利用者さんと時間をかけて振り返りや勉強していきたいと思います。
ご参加くださった皆様、ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。皆様からのご意見を参考に、来年も期待に応えられるつどいを開催したいと思います。