11月7日(金)、三鷹市・武蔵野市・ハローワーク三鷹の3所合同開催で「障がい者の就労を考えるつどい2014 就労をめざすプログラムはいろいろ~自分に合ったプログラムを見つけよう!~」を武蔵野スイングホールにて行いました。合同開催は今年で7回目になります。
今回のつどいは、企業への就労に向けて自分に合った準備のプログラムが見つけられるように、長く働く力を身につけるための準備のポイントを理解していだいた上で、いろいろな準備のプログラムを紹介する、という内容で実施しました。当日は当事者、ご家族、企業の方々や、福祉・医療・教育・行政関係から164名の方々にご参加いただきました。
開会にあたり、三鷹市、武蔵野市よりご挨拶をいただきました。三鷹市の清原慶子市長からは、「平成28年4月の障害者差別解消法や平成30年からの精神障害者の雇用義務化など、障がい者の就労は重要な施策になっています」「障がいがあってもなくても、働くことは社会参加として重要なことであり、障がいのある方々の就労支援が様々な立場の方々との協働の取り組みによって推進されることを願っています」とご挨拶いただきました。武蔵野市の邑上守正市長は公務出張のため、健康福祉部健康福祉課長の山田剛氏よりご挨拶として、「現在武蔵野市では障害者計画第4期の障害福祉計画を策定しており、共生社会の実現を大きな目標とし、5つの重点的な課題のひとつとして就労や余暇活動を含めた社会参加の充実・強化を掲げています」「来年度からは、就労支援センターあいるを中心とした就労支援ネットワークに、生活支援も含めた総合的な就労支援体制を充実・強化していく予定です」とお話しいただきました。
はじめに、ハローワーク三鷹専門援助第二部門統括職業指導官の渡邉次夫氏より、「障がい者雇用の現状について」報告がありました。まず、障害者雇用率制度については平成25年4月より民間企業で1.8%から2.0%になっていることと、雇用率のカウント方法について説明がありました。障害者雇用納付金制度では、平成27年4月より対象が100人を超え200人以下の企業・事業所に拡大されることと、雇用率未達成の企業に対する指導について説明がありました。次に雇用状況については、全国と東京都の民間企業における実雇用率は法定雇用率に達していないが雇用者数は10年連続で過去最高を更新していること、都内やハローワーク三鷹管轄内の新規就職件数では精神障がいの方の増加が大きいこと、などをご報告いただきました。ハローワークの雇用支援体制として障害者就労支援チームや障害者トライアル雇用の概要、改正障害者雇用促進法について説明があり、改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針については今後検討が進んでいくという報告がありました。
次に、東京障害者職業センター多摩支所主任障害者職業カウンセラー井上量氏より、「長く働く力を身につけるために」というテーマでご講演いただきました。企業に就労する障がい者数は年々増えており、就職しやすい時代がやってきたと思われる一方、長く働くためには「働く能力」とは別の、「規則正しく生活する力」や「やる気をもって仕事をする力」、「頑張るべき時、頑張れる力」、「周りに支えてもらえる力」などが重要であると説明がありました。長く働く力を身につけるための準備のポイントには、職業生活を支える土台となる日常生活能力や社会生活能力、基本的労働習慣が準備できているかをチェックして課題に取り組むこと、支援を得ながら働くこと、会社から求められることは会社によって違いがあるので自分に合った働き方と職場環境を考えること、などが大切であるとお話しいただきました。
次の事業紹介では、井上氏から全国に設置されている障害者職業センターについてと、センターで実施されている職業評価、職業相談、職業準備支援、ジョブコーチ支援などについて目的や内容を紹介いただきました。また、同じ法人で運営されている国立職業リハビリテーションセンターについても特徴や訓練内容について説明いただきました。
公益財団法人東京しごと財団障害者職業支援課富田尚志氏からは、障がいのある方々の就労の促進のために、ハローワークや就労支援機関などとともに支援をする障害者就業支援事業について紹介がありました。就活セミナー、職場体験実習事業、障害者委託訓練事業、企業合同説明会、東京ジョブコーチ、精神障害者雇用サポート事業など、求職者だけではなく障がい者雇用に取り組む企業への支援も展開しているという説明がありました。
実践報告では、まず三鷹市障がい者就労支援センターかけはしより、就労継続B型事業所と他の就労準備のプログラムを利用して就職を実現した3人の精神障がいの方からのお話しをもとに、就労準備のための就労継続B型の活用方法と3つのプログラムの特徴を報告しました。就労継続B型は、規則正しい生活や作業をするコツを身につけること、作業を通して「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」を身につけること、さまざまな方々と一緒に作業をすることで対人関係の力をつけること、などに役立ったことが分かりました。他の準備のプログラムには、障害者委託訓練事業、東京障害者職業センター多摩支所の職業評価と職業準備支援、かけはしの職場実習がありましたが、実践的に職業に関する準備をすることでスキルアップや他者と働く力、「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」のタイミングなどを身につけることができていました。3人の方は就労継続B型で自分のペースで就労の準備を進め、実践的な他の準備のプログラムとの組み合わせによって、経験から就労に向けて学んでいくことができました。
次の武蔵野市障害者就労支援センターあいるの実践報告では、就労移行支援事業所であるワークセンターけやき支援員小野裕氏、大塚丈彦氏よりプログラムの説明と、ここでの準備を経て就労を実現したお1人目の当事者である高次脳機能障がいの方からの体験発表がありました。ワークセンターけやきが大切にしている「さまざまな作業へのチャレンジを推奨」「企業での仕事を想定した環境作り」「自発性、自主性の尊重」という中で当事者の方が業務の能力を向上させ、チャンスをつかんで就職されたことが紹介されました。当事者の方からは、「就職活動では趣味でもどんなことでもいいので経験や長所をアピールすること」「就職後は職場の方々に自己開示して、自分から職場に溶け込むことが大事」とのアドバイスをいただきました。2人目の当事者の知的障がいの方については、ワークセンターけやきからの経過説明の後、現在勤務している株式会社日立ハイテクサポートの上司である施設マネジメント部庶務グループ部長代理工藤庄氏より報告がありました。2週間の企業内実習で明らかとなった社会生活上の課題をワークセンターけやきで取り組み、準備をした後に就職したことで、ご本人は職場の期待に応えて業務(郵便の集荷、仕分けなど)を行い、安定して働けるようになっているとのことでした。「企業だけで障がい者の就労支援はせず、他の支援機関と連携することが大事である」とご説明いただきました。今後は社内のジョブコーチ(第2号職場適応援助者)を増やし、障がいのある社員も65歳の定年まで働けるように会社の体制を整備していきたい、とのお話でした。
最後に、三鷹公共職業安定所の松井勝所長より閉会のご挨拶として、「今日は就労を目指す方、就労中の方、支えていらっしゃる機関の方、雇用に取り組む企業の方など、様々な立場の方にお集まりいただいて、障がい者の就労について考える貴重な時間を共有できたことは大変重要なことだったと思います」「障がい者の方が安定した職業生活を送っていくには、様々なプログラムの活用やプログラム同士のネットワークが非常に重要と思います。今日のつどいの中から感じたこと、考えたこと、知ったことを持ち帰っていただき、障がい者雇用の推進に取り組んでいただきますようにお願いいたします」とお話しいただきました。
実践報告の後の質問とディスカッションは時間切れとなってしまいましたが、終了後に演者の方々に質問をされている参加者の方々がおり、今回のつどいの内容に関心をもっていただけたと感じました。
当日はたくさんの方にお越しいただき、多くの方々にご協力を賜りまして、ありがとうございました。また、ご後援をいただいた武蔵野商工会議所様、三鷹商工会様、武蔵野市民社会福祉協議会様、三鷹市社会福祉協議会様には広報活動にもご協力いただき、誠にありがとうございました。
参加した方からはアンケートのご回答をたくさんいただきました。一部をご紹介します。
・障がい別の雇用状況を詳しく聞くことができた。
・生活の基本的な土台が大切なのだと改めて実感しました。
・当事者の経験談、生の声が良かった。
・うまく支援を使いながら具体的に就労への過程をきけた。
・企業の取り組みをうかがえたことは大変よかった。
アンケートのご意見を参考にさせていただき、来年も期待に応えられるような「障がい者の就労を考えるつどい」を企画したいと思います。