障がい者の就労を考えるつどい 2017
『障害者雇用、平成30年度に向けて仕組みづくり』
~障がいのある方が企業の中でより活躍できるように~のご報告
11月10日(金)、三鷹市・武蔵野市・ハローワーク三鷹の3所合同開催で「障がい者の就労を考えるつどい2017」を三鷹産業プラザにて開催しました。合同開催は今回で10回目になります。
平成30年度から精神障がいのある方の雇用義務化と障害者雇用率の引き上げが決定し、今後障がい者の雇用がさらに進むことから、雇用した後の定着をどのように図っていくかが大きな課題になっていくと考えられます。今回のつどいでは、障がいがある方が企業でより活躍するためには、企業と当事者と支援者がどのような取り組みをしていけばいいのか、それぞれの立場からお話をしていただきました。
開会にあたり、三鷹市長、武蔵野市副市長よりご挨拶をいただきました。三鷹市の清原慶子市長からは、平成30年度から精神障がいの方の働く機会が拡充されることや、ひとりひとりの個性や障がいに違いがあるように、職場も目的や環境によって違いがあるため、どうしたらマッチングできるか、同じ目標のためにそれぞれの力を連携して強めていければとのお話がありました。
武蔵野市の五十嵐修副市長からは、障がい者の働きやすい職場づくりはまだまだ進んでいないのが現状で、今回のつどいが今後の職場づくりについて学んでいく良い機会になればとのお話がありました。
【基調報告 ①「ハローワークの窓口業務から見えること これまでの10年 これからの10年」】
はじめに、ハローワーク三鷹専門援助第二部門、統轄職業指導官石井克枝氏より報告がありました。ハローワークにおける障がい者の就労支援については、「職業紹介」と「企業指導と支援」の二つの柱があること、また障害者雇用促進法の主な改正経過についての説明がありました。障害者雇用に関しては障害者雇用促進法という法律の後押しもあり、企業就労する障がい者は年々増えており、とりわけ、今後は精神障がい、発達障がいの方の就労が増えていくとのことでした。
ハローワークでは、精神障がい、発達障がいのある方々の雇用の増加を受け「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を行う事業が始まったとのことでした。これは企業で働く一般の従業員の方を主な対象に、精神障がい・発達障がいについて正しく理解していただくための講座を開講、職場内で応援者になっていただくための事業との説明がありました。
【基調報告 ②「企業に求められるこれからの障害者雇用環境」】
次に、東京障害者職業センター多摩支所 主任障害者職業カウンセラーの井上量氏から報告がありました。これからの障害者雇用環境について、単なる雇用という「イベント」にとどまらず、安定した雇用につなげるために周到な計画を要する大きな「プロジェクト」として取り組むべきとの話がありました。
「はじめる」「つづける」「ひろげる」をキーワードに、これからの障害者雇用についてどのような取り組みが必要か話がありました。企業は障害者雇用を「はじめる」(受け入れ段階)ばかりに注力せず、「つづける」「ひろげる」ために注力する必要があるとの説明がありました。障がい者の雇用継続は大変重要な課題であり、雇用継続のためには障がいのある従業員に対する支援と従業員を支える職場への支援が欠かせないとの話がありました。また、障がいのある従業員がやりがいをもって働けるような社内制度の整備の重要性についても話がありました。障害者雇用の成功には一担当者が全てを行う体質から、全社的あるいは外部支援機関を巻き込んだ事業として位置づけることが重要とのことでした。
【パネリスト① 「障がい者雇用創出の取り組み」 社会保険労務士法人 肥後労務管理事務所】
社会保険労務士法人 肥後労務管理事務所の一丸綾子氏より「障がい者雇用への思い」と「障がい者雇用への取り組み」についてお話しいただきました。社会保険労務士として障害年金の申請のお仕事に携わる中で、障がいのある方をより理解したいというお気持ちから障がい者雇用を始めてみようと思われたとのことでした。障がい者雇用をする上でのポイントして「体調」「スキル」「向上心」があげられました。その中でも、障がいへの配慮はするが特別扱いはしないとのお話がありました。業務依頼を一本化したり、障がい特性を活かした業務、職域の切り出しを行い、得意業務を作っていくなど、障がいがある方が働きやすい環境づくりが行われていることがわかりました。
肥後労務管理事務所で働いてる当事者の方からのご報告では、就職までの道のりや就職しての心の変化、今の課題とこれからの可能性についてお話がありました。就労移行支援事業所での訓練を経て、訓練の仕上げとして庁舎内実習を活用、職員の方々を参考に働いている時の姿勢、立ち振る舞い、言葉づかいを学んだとのことでした。就職してからは、自分に自信が少しつき、「自分は自分、他人は他人」と区別することができるようになったそうです。働かせてもらえることに感謝し、給料のありがたさが身に染みるとのことでした。これからの可能性では、障がい者が安心して働くには、当事者と会社との信頼関係が必要不可欠であり、当事者も病気と正面から向き合い、病気とともに働き方を考える努力が必要であるとのお話がありました。
【パネリスト② 「障がいあのある社員の能力向上を目指して」 シダックスオフィスパートナー株式会社】
次に、シダックスオフィスパートナー株式会社の佐藤功晃氏より採用から職場定着の取り組みについてお話しいただきました。やりがいに配慮しモチベーションを高めるために「グループワークによる勉強会を毎月開催」「キャリア形成を目的に人事制度を構築」などに取り組んでいるとのことでした。また、支援機関との連携も積極的に行い、家庭や医療機関との連携は支援機関にお願いしているとご説明がありました。就職はスタートであり、「働きつづける力」をしっかりと身に付けてほしいとお話がありました。
シダックスオフィスパートナー株式会社で働いている当事者の方からのご報告では、前職は高齢者施設で障がいをクローズにして働いていたため、夜勤などもあり限界を感じ、障がいをオープンにしての就職を考えられたとのことでした。現在はデータ入力が主な業務で、上司の細やかな配慮があり働きやすいとのことでした。今後は仕事のスキルアップを図り、一般正社員を目指したいとのお話でした。
【パネリスト③ 「10年の就労継続とハッピーリタイア」 生活協同組合コープみらい】
パネリスト③では、まずは当事者の方が10年働いていた生活協同組合コープみらいの佐野行生氏より障害者雇用の状況や業務の内容についてご説明いただきました。
続いて、当事者と当事者が通所している就労継続B型事業所の職員から就労までの経過と就労後の経過についてお話がありました。就労後当事者の気持ちの変化に合わせ、当事者、施設職員、三鷹市障がい者就労支援センターかけはしで相談して解決策を考えてきたこと、また、一般就労と福祉施設の両輪が長く続いた要因だったとお話がありました。最後に当事者から「同じ仕事をしていたから正社員になりたかった」との言葉がありました。深く考えさせられる言葉になりました。
質疑応答、ディスカッションでは井上氏の進行で、肥後労務管理事務所平井俊輔氏も加わっていただき、事前質問や会場の皆様からの当日の質問にお答えいただきました。さらに理解を深めることができました。
最後に、三鷹公共職業安定所の坂田敦子所長より閉会のご挨拶をいただきました。
当日は140名の方々にお越しいただき、開催にあたっては多くの方々にご協力を賜り、心から感謝を申し上げます。また、ご後援をいただいた武蔵野商工会議所様、三鷹商工会様、武蔵野市民社会福祉協議会様、三鷹市社会福祉協議会様には広報活動にもご協力いただき、誠にありがとうございました。
参加した皆様からはアンケートのご回答をたくさんいただきましたので、ご意見を参考に来年も期待に応えられるような「障がい者の就労を考えるつどい」を企画したいと思います。