「障がい者の就労を考えるつどい2016」
~改正障害者雇用促進法施行から1年目~
だれもが働きやすい職場づくりのために 合理的配慮の今と明日を考える」
のご報告
11月8日(火)、三鷹市・武蔵野市・ハローワーク三鷹の3所合同開催で「障がい者の就労を考えるつどい2016」を武蔵野スイングホールにて行いました。合同開催は今年で9回目になります。
改正障害者雇用促進法が2016年4月に施行され、障がい者の雇用における差別の禁止、合理的配慮の提供が義務づけられました。昨年度は、差別や合理的配慮がそれぞれ具体的にはどのようなことか、企業や支援機関に何が求められるか、などについて取り上げました。今年は更に理解を深めるため、行政報告、ユニバーサルな視点からのご講演、実践報告、当事者発表を行いました。
開会にあたり、武蔵野市長、三鷹市長よりご挨拶をいただきました。武蔵野市の邑上守正市長、三鷹市の清原慶子市長とも公務出張でしたので、ご挨拶のメッセージをいただきました。
【行政報告 「障害者雇用の現状と改正障害者雇用促進法1年目の概況」】
はじめに、ハローワーク三鷹専門援助第二部門、藤岡茂樹氏より行政報告がありました。まず、障害者雇用の現状については、東京における障害者雇用率の達成企業は32.1%で全国の47.2%より低いこと、達成割合は大企業が高く中小企業では低いこと、東京の1000人未満規模の達成割合が全国と大きく乖離していること、東京の障害者新規求職申込件数と就職件数とも平成26年度以降精神障害者の割合が他の障害より多くなっていること、精神障害者の雇用は増加しているが全体の8.1%にとどまり取り組みの強化が必要であること、との報告がありました。
次に改正障害者雇用促進法に関して、改正の経緯や概要、障害者差別と合理的配慮の指針、苦情処理・紛争解決援助についての説明の後、相談事例の紹介がありました。雇用における障害者の差別の禁止・合理的配慮提供の推進のためには、障害のある労働者、企業、関係機関が良好な関係を築くこと、そのためには労働者と企業が相互理解をして相談しやすい関係性を作ること、関係機関は労働者と企業双方への支援や連携を充実させることが重要と説明がありました。
【講演 「誰にとっても働きやすい職場づくり~障がい当事者、企業、支援機関に求められる役割とは?~」】
次に、東京家政大学教授上野容子先生よりご講演をいただきました。先生は社会福祉法人豊芯会の理事長でもあり、1970年代後半から精神障がい者の地域生活支援や就労の場づくりに携わってこられたご経験からお話をしていただきました。
まず、働く意味について、生活の糧を得ることだけでなく、社会参加やリカバリーであり、重要な基本的人権のひとつである、との説明の上で、改正障害者雇用促進法において障がい者や事業主、行政の役割がどのように規定されているか、解説いただきました。また、雇用や就労支援で重要な概念として「アクセシビリティ」について、集団(誰にでも)を対象とした近づきやすさ、アクセスしやすさのことで、サービスや交通の利用しやすさ以外に、施策や助成制度などを支障なく利用できるよう迅速に情報提供をすることも重要と、お話がありました。
次に、障がい者の雇用状況と就労系福祉サービスの利用状況の説明がありました。就労継続A型の平均賃金が下がり、就労継続B型で工賃が上がっているという傾向があり、多様な障がいのある方々が多様な目的で利用している現状を報告いただきました。また、企業就労に結びつくためには、障がい者本人に働くモチベーションがあること、支援機関が本人サイドに立った支援をすること、職場の受け入れ体制があること、が必要であり、障がい特性をマイナスととらえず、特性を活かすことのできる業務を切り出すことが大事と話されました。
最後に、新しい就労支援としてソーシャルファームについて紹介いただきました。これは、労働者と労働形態の多様化と、社会的な目的をもった第三の職場であり、障がい者以外にも就労が困難な様々な人たちでお互いの強みを生かし合い、補い合って事業を発展させる職場で、誰にとっても働きやすい職場づくりの一つの形として説明がありました。
【企業からの実践報告 株式会社グリーンハウス】
実践報告の最初は、企業における障がい者雇用の取り組みとして、株式会社グリーンハウスの理事本間英士様より報告をいただきました。
まず70年になる会社の歴史と「食を通した健康経営の実践」のご紹介、会社におけるダイバーシティ推進への取り組みとして、女性の活躍推進や障がい者施設との協力の事業の説明がありました。障がい者雇用は2012年から体制づくりを始め、雇用率(2016年3月現在)は2.17%に達しているとのことでした。
次に、障がい者雇用の体制づくりを紹介いただきました。「働き易い職場環境を整え、なくてはならない人に」という考え方のもとに、採用の基準や面談時の留意点、サポート体制、トラブル時の対応などを整えていることが分かりました。事例も紹介いただきましたが、早く状況確認をすること、決めつけずに現場で確認をすること、できることに着目してわかっていないことを見つけることなど、合理的配慮の提供に至るまでの丁寧なプロセスを報告いただきました。
「人に喜ばれてこそ会社は発展する」という社是をご紹介いただきましたが、多様な方々が個性と能力を生かして会社に貢献できるように、体制づくり、組織づくりに取り組んでいることが分かりました。
【武蔵野市障害者就労支援センターあいるからの実践報告】
武蔵野市障害者就労支援センターあいるからは、発達障がいの当事者の方から報告をいただきました。「発達障害の受診前後での障がい理解の変遷」「就職のために利用した機関」「働くうえで難しいと感じたこと」「働くうえで達成感や自信を見出したこと」「入社前後の違い」というテーマで、プロセスに沿って自分自身の変化や感じたこと、気付いたことを紹介いただきました。ご自身の経験から、会場の皆さんに就労に向けての多くのアドバイスを提供いただきました。
【三鷹市障がい者就労支援センターかけはしからの実践報告】
三鷹市障がい者就労支援センターかけはしからは、知的障がいの当事者の方から報告をいただきました。退職を機に職業評価とトレーニングを受けることで、自分自身の長所や短所、職場にお願いしたい配慮事項を整理することができたと報告がありました。就職活動ではすぐに結果が出なかったですが、自分自身が仕事に求めることを再確認することで、現在の会社に就職することができたとのことです。まとめに、就労を目指す皆さんに応援のメッセージを送っていただきました。
質疑応答、ディスカッションでは上野先生の進行で、演者の皆さんと会場の皆さんとでやり取りができ、さらに理解を深めることができました。
最後に、三鷹公共職業安定所の坂田敦子所長より閉会のご挨拶をいただきました。
当日は120名の方々にお越しいただき、開催にあたっては多くの方々にご協力を賜り、心から感謝を申し上げます。また、ご後援をいただいた武蔵野商工会議所様、三鷹商工会様、武蔵野市民社会福祉協議会様、三鷹市社会福祉協議会様には広報活動にもご協力いただき、誠にありがとうございました。
参加した皆様からはアンケートのご回答をたくさんいただきましたので、ご意見を参考に、来年も期待に応えられるような「障がい者の就労を考えるつどい」を企画したいと思います。